私の師匠は沖田総司です【上】

「高杉、もうやめろ。もしかしたら人違いかもしれねえだろ」

ヅラさんが低い声でいいます。でも、その人は表情を変えずに口元に笑みを浮かべていました。

「一度見た顔は忘れねえから見間違える筈がねえんだ。……まあいい。本当に俺を覚えてなさそうだ。

俺は高杉晋作。親切に二度も教えてやったんだ。もう忘れるなよ」

高杉さんが私を見る。

この人が高杉晋作なんだ。私は高杉さんに向かって少し頭を下げました。

辺りに重い空気が流れる。でも、その空気はパンと手を叩く音で断ち切られました。

手を叩いたのは稔麿さんです。

「この話はもう終わり。僕さっきから腹が減って死にそうなんだ。蒼蝶、君が作った料理僕も食べていいかな?」

「はい。沢山作りましたから皆さんでどうぞ」

「ありがとう。じゃあさっそく分けて部屋で食べよう」

稔麿さんが慣れた手つきで棚から食器を取り出します。

「ほら、龍馬、ヅラ、晋作も手伝って。手伝わない人はご飯なしだよ」

「あっ、ああ、分かった。お嬢さんも食べて行くよな」

「でも……」

「おまえが作ったんだ。食っていけよ」

ヅラさんと龍馬さんも料理を分け始めました。