私の師匠は沖田総司です【上】

でも、あそこに敵は数人いた筈だ。

だったら、その人たちはどうなったの?

……記憶がない。

そこだけ記憶がすっぽりと抜け落ちている。

だから目の前のこの人に会った記憶はない。

だから戦った記憶もないし、この人が誰かも分からない。

「あの……私、貴方のこと知り、ません」

「本当に覚えてねえのか?」

震える手をギュッと握りしめながら、私はコクリと頷きました。

「確かにおまえは、俺のことを覚えるつもりはないとは言っていたが、本当に覚えてないとは都合のいい頭をしてるな」

「本当に、本当に覚えてないんです。だから……」

もう訳が分からなかった。

考えれば考えるほど頭がグルグルして、混乱してくる。

ギュッと震える手を握っていると、私の前に大きな背中が現れました。

「晋作、もうやめろ」

その大きな背中は龍馬さんでした。

私をその人から隠すように立ってくれています。

その様子に、その人は興味深そうに見ていました。

「その女に惚れてんのか?」

龍馬さんは何も言いませんでした。

その人は益々興味深そうに私たちを見てくる。

私は怖くて不安で堪らなくて、龍馬さんの着物を少し掴みました。