私の師匠は沖田総司です【上】

「おまえはここだろ」

手を引かれて龍馬さんの隣に座らされる。その距離は、いつもより近い気がします。

でも、どうせ今日までだからと思って、素直にそこに座っていました。

「今日は無口だな」

「気のせいですよ」

「ふ~ん」

私は膝を抱え、その間に顔を埋めながら、あのことを言わなきゃと思っていました。

でも、なかなか言えなくて、時間だけが過ぎて行く。

今日に限って龍馬さんも無口です。まぁ、もともと龍馬さんも私もあまり、しゃべる方ではありませんが。

「……あのさ」

「はい?」

私のくぐもった声が響く。

「昨日のアイツのことなんだけど」

「あの人が未来を変えてあげたい人なんです」

「そうか」

再びやってきた沈黙。

その沈黙を破ったのは私でした。

「あの、龍馬さん」

「ん」

「私、今日でここに来るの最後にします」

周りの空気が変わる。

龍馬さんの方を見れば、彼は眉を寄せて少し悲しそうな顔をしていました。

「なんでだよ」

「明日から仕事が忙しくなるので、あまり自分だけの時間が取れなくなるんです。だから」

「どうしても無理なのか?」

コクッと頷くと、龍馬さんは黙ってしまいました。