私の師匠は沖田総司です【上】

やっぱり、天宮さんを別の隊に入隊させるのはやめよう。

天宮さんには僕の近くにいて欲しい。

「組長、顔がニヤけてますよ。何かよからぬことを、考えているんじゃないんですか?」

「別に。これから楽しくなりそうだなって思ってさ」

「……本当ですか?」

天宮さんが疑うような目で見て来るけど、僕はニコニコと笑うだけだった。

「天宮さん、明後日から1番隊の稽古に参加してね。明日は1番隊の稽古は休みだから」

「はい」

「それと、よく散歩に行ってるらしいんだけど……」

と言うと、天宮さんは少し目を伏せた。

「分かっています。隊に入隊したら、稽古や巡察で自分だけの時間はあまり、取れなくなるんですよね。

散歩はもうやめます」

「ごめんね」

「どうして組長が謝るんですか」

僕が謝ったのは天宮さんが悲しそうに笑ったからだ。

天宮さんにとって散歩は唯の散歩じゃない。

あの男と会う唯一の手段なんだ。

僕たち隊士は、屯所からあまり出ることができない。

外に出るのにも、土方さんたちから許可をもらわないといけないんだ。

だから天宮さんだけに許可されている散歩がなくなれば、彼女は簡単に外に出る手段がなくなるってこと。

天宮さんは、あの男のことを話したりはしないけど、親しい間柄っていうのは分かってる。

たぶん、天宮さんにとってあの男に会うことは楽しみの一つ。

僕はそれを奪ってしまう。

申し訳ないとは思ってる。

でも、天宮さんがあの男に会わなくなるって思うと、ホッとする自分がいるのも確かだった。