私の師匠は沖田総司です【上】

「何で逃げるのさ。指を舐めるのは消毒の為なのに」

「……」

身体を近付けると、天宮さんは近付いた分だけ離れる。

そしてボソッと何かを言ったけど、声が小さすぎて聞こえない。

聞き返すと天宮さんは下からチラッと僕を見た。

「だって、恥ずかしいじゃないですか……」

「え?」

「だから、いくら傷の消毒の為とは言え、男の人に指舐められるのは恥ずかしいんですよ!

お年頃の女の子の心臓は、ガラス細工のように繊細なんです!そんなに舐められたら、私の心臓は幾つあっても足りません!

それぐらい察してください!」

天宮さんが顔を赤くしながら顔を逸らした。

じゃあ、あの時指を舐めて逃げたのって、いやだったからじゃなくて、恥ずかしかったから?

そっか……いやじゃなかったんだ。

「よかった」

「何がよかったんですか」

「ん?こっちの話」

「そうですか」

天宮さんはまた僕から顔を逸らす。

こっちを見てくれた時の顔は、まだ林檎みたいに赤かった。

普段、一君みたいに冷静な彼女だけど、こんな風に可愛らしい反応をするんだと、初めて知った。

何だか普段見れない一面を見れて得した気分。

そして、僕がまだ知らない、彼女の一面を見てみたいという、欲求が出てきた。

そう思ったら何だかワクワクしてきた。