私の師匠は沖田総司です【上】

しばらく土方さんを説得したけど、結局最後まで許可を出してくれなかった。

気分転換に風呂に入り、髪が濡れたまま部屋に戻ろうと廊下を歩いていると、縁側に座る天宮さんの姿があった。

天宮さんは外に出した足を、振り子のように前後に揺らしながら、浅葱色の隊服に針を通している。

天宮さんは僕の存在に気付いていないのか、意図的なのかは分からないけど、こっちを見ない。

彼女から少し離れた場所に腰掛けるけど、やはり僕に目を向けてくれなかった。

「天宮さん」

小さく彼女の名前を呼ぶ。

そしたら天宮さんが「え?」と言って、こっちを見てくれた。

「ぎゃわっ!くっ、組長!いつからそこにいたんですか!」

どうやら縫物に集中して、僕の存在に気付いてなかっただけみたい。

無視じゃなくてよかった。

「ちょっと前からここにいたよ」

「……そうだったんですか。気付かなくてごめんなさい。私、集中すると周りの音が聞こえなくなるんです」

「確かに、すごく真剣な顔で手元見てたもんね」

天宮さんが少し恥ずかしそうに俯きながら、また隊服を縫い始めた。

それにしても

「怪我、増えてない?」

部屋で見た時は、彼女の指に包帯なんてなかった。

でも、今は殆どの指に包帯が巻かれている。

自分で指に包帯を巻いたのか、変になっている箇所がある。