私の師匠は沖田総司です【上】

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僕は天宮さんから数歩離れた距離を保ちながら屯所に戻っていた。

川原から出てからというもの、天宮さんはずっと後ろを歩く僕の方を見てくれない。

いつもなら「組長」って言って、笑顔で忠犬みたいに隣を歩くのに、今は違う。

「あっ、天宮さん……」

後ろから彼女を呼ぶけど、僕の声が小さすぎて町の音に掻き消されてしまう。

けど、もし天宮さんが反応してくれたとしても、何を話せばいいだろう。

僕は天宮さんに叩かれた頬を撫でる。

叩かれた場所はヒリヒリと疼くような痛みがして、熱をもっていた。

とにかく、彼女に謝ろう。

朝に言ってしまった無神経な発言と、さっき命を粗末にするような行動をしてしまった二つを謝る。

僕は深い溜息を吐いた。

本当、今日は散々だ。

朝から天宮さんを怒らせて、そして謝ろうとして追いかけて見つけたと思ったら、また怒らせた。

しかも泣かせてしまった。女の子を泣かせるなんて男として最低だ。

僕は前を歩く天宮さんを見た。

身体全体から近寄りがたい雰囲気が出ている。

人間って本当に欲張りな生き物だ。

いつも見ていた天宮さんの笑顔がなくなった途端、その笑顔が見たくなるなんて。

……川原で僕が知らない男と一緒にいた時は、あんなに笑ってたのに。