私の師匠は沖田総司です【上】

組長の目がスッと細められる。

その視線の先には、今も繋がれている私と龍馬さんの手がありました。

それに気付いた私はすぐに手を解いて、何事もなかったかのように振る舞いましたが、行動に移すのが遅すぎました。

「帰るよ」

組長は素早く私に近づくと、有無も言わせず私の手を取り歩き始めた。

強い力で手を握られ体が引っ張られる。

「あっ、……あのっ!組長……!」

声を掛けても組長は私の方に顔を向けずに歩き続ける。

組長の手を振り解こうと思っても、私は本気で振り解くことができなかった。

もし私が本気で振り解いたら、組長が傷ついてしまうのではないかと思って怖かったから。

そしてまた組長に嫌われて、初めの様な関係に戻るのはいやだった。

冷たい目で、傷つく言葉を言われる生活には戻りたくない。

もう、あの生活に耐えられる自信はなかった。

だったら何もせず、大人しく組長の手に引かれるのが良いのかもしれない。

でも、龍馬さんにさよならも言わずにこの場を去るのもいやだ。

やっぱりここは何とかして組長を説得して、龍馬さんにさよならを言わせてもらおう。

それが一番だ。

そう思って、口を開きかけた瞬間

「待てよ」

低くて威圧感のある龍馬さんの声が響いた。