私の師匠は沖田総司です【上】

後ろを振り返れば鉢金を額に巻き、浅葱色のダンダラ模様の羽織を着た集団がいました。

全員が鋭い目で私を睨みつけてくる。

蛇に睨まれた蛙とはこのことをいうのでしょう。私の身体は固まって動かなくなりました。

まるで、自分の身体じゃないかのように、ピクリとも動きません。

「あの、その……」

「屯所の前をコソコソと怪しい奴!成敗してくれる!!」

そう言って、羽織集団は一斉に刀を抜いて私に突きつけた。同時に向けられる全身を刺すような殺気。

怖い……怖い怖い……!

いくつもの鋭い剣先や殺気が向けられ、私の身体は限界だった。

腰が抜け、ペタリと地面に座り込んでしまう。

すると私の行動に、羽織集団の表情が徐々に困惑したものに変わっていきました。

「ここで何をしているんだ」

腰を抜かしている私の背後から聞こえたのは、右差しの男性の声。

すると突然、羽織集団が一斉に構えていた刀をおろした。

「これは組長、丁度良いところに。屯所の前で怪しい動きをする者を見つけたんです。それで」

「それで此奴に刀を向けたというのか」

「はい」

「そうか、だが安心しろ間者ではない。俺が連れてきた入隊希望者だ」

「そうだったんですか!?申し訳ございません、確認も取らず勝手な真似をしてしまいました」

「いや、気にする必要はないだろ。怪しい動きをしていたコイツも悪いのだからな。それに、目を離した俺も悪かった」

その後、男性と羽織集団は数回言葉を交わした後、羽織集団は建物の中へと入ってしまった。