私の師匠は沖田総司です【上】

曲がればすぐ屯所が見える辺りに来ました。

「ここでもう大丈夫です」

「ああ」

龍馬さんが私を下ろしてくれます。河原からここまで来る間に、眩暈は完全に治っていました。

「龍馬さん、色々とありがとうございました」

ペコッと頭を下げます。そして、龍馬さんに背を向けたら肩を掴まれました。

どうしたのかと思っていると、龍馬さんが懐からある物を取り出し、私の手に乗せました。

「懐中時計?」

手に乗せられたのは龍馬さんの懐中時計でした。龍馬さんの懐に入っていた為か、少し温かいです。

ちょっとしたカイロですね。冷たくなっていた手に温もりが染み渡ります。

「貸してやるよ」

「え?」

「秒針の音を聞いたら落ち着くんだろ。ちゃんと眠れるようになるまで、おまえが持ってろ」

「でも龍馬さんの大切な物ですよね?」

「あくまで貸すだけだから。それに、その懐中時計を必要としている奴がいたら、そいつが持っていた方が良いからな」

私は手元の懐中時計に目を落とした後、龍馬さんの顔をチラッと見ます。

おそらく私が何を言っても、龍馬さんは懐中時計を受け取らないでしょうね。

それに秒針の音を聞くと、安心して眠りに着けるのは事実ですし、素直に甘えさせて頂きます。

「ありがとうございます。しばらくお借りします」

「ああ」

そう言うと、龍馬さんは笑顔になり、そして「またいつか会おう」と言って来た道を帰って行きました。