私の師匠は沖田総司です【上】

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「師匠は私にとって、生きる希望を与えてくれた人なんです。師匠がいなければ、私は今頃、辛い生活を送っていました」

「そうだったのか……」

龍馬さんの掠れたような呟きが、冷たい風の中に消えていく。

秋風に晒された身体は、すでに芯まで冷えていたけど、龍馬さんの大きな手に包まれた手は温もりに包まれていた。

龍馬さんは、ぼんやりしながら空を眺めている。

彼には師匠の名前と習った流派だけは伏せて話した。

沖田総司と天然理心流の名前を言ってしまえば、聡い龍馬さんはすぐに私が新選組の一員だと分かってしまうと思ったから。

本当は全て話したかったけど、今の関係を崩したくなかった。

龍馬さんに敵意の目を向けられるのが怖かったんだ。

全てを話せない罪悪感と、むず痒い感覚が胸の中を燻っていた。

「話してくれてありがとう」

「いえ。私の方こそお礼を言いたいです。誰にも話したことがなかったので、聞いてくれてとても嬉しかったです。

龍馬さん、ありがとうございました」

龍馬さんは少し微笑んだ後、スッと立ち上がりました。

「寒いだろ。蒼蝶も体調悪そうだし帰ろう」

「はい」

繋がれた手が離れて少し寂しさを感じながら立ち上がります。

そしたら急に立ち上がったのがいけなかったのか、急に周りが暗くなって、耳鳴りが起きました。

倒れる、と思って足を踏ん張ろうとしたけど力が入らない。

倒れる寸前、腕を掴まれました。