私の師匠は沖田総司です【上】

次の日の昼。私は病院を退院しました。

車から降りると、すぐに家の中に入る。

そして肩から下げていた小さなリュックをソファに置き、水が入った牛乳瓶にいけてある桜の枝を持って、庭に出ました。

「師匠」

『ん?』

外から私の家を、興味深そうに見ていた師匠を呼びました。

師匠がフヨフヨと浮きながら私の所に来ます。

「お家、どこが良い?」

『う~ん、あそこ』

「ここ?」

『うん』

私は庭にある倉庫から小さなスコップを取ってくると、穴を掘りました。

でも、庭の土は思っていたよりも硬くて、なかなか穴が大きくなりません。

悪戦苦闘しながら作業を続けていると、後ろから声を掛けられました。

「蒼蝶、何をしてるんだ?」

「あっ、お父さん。あのね、この枝を庭に植えたいの」

「これをかい?いいよ。ちょっと待ってて」

お父さんが倉庫から、大きなスコップと肥料を持って来てくれました。

それから、お父さんと一緒に桜の枝を庭に植えました。

「毎日水をやるんだよ」

「うん!」

『ありがとうございました』

師匠がお父さんに向かってお礼を言いました。でも、お父さんの視線は師匠に向けられません。

少し寂しそうな表情をする師匠。

この時、師匠の姿が見えるのは私だけなのだと、改めて思いました。

師匠の寂しそうな表情を見ながら、私はいつまでも師匠の傍にいてあげようと思いました。