「どうなのだ?」

「あの、その……」

武士かと問われたら答えはノーだ。私はサラリーマン一般家庭の長女なのだから、武士の身分ではない。

と言うか、まず、私の時代には武士という身分はない。

だがしかし、普通の町人ですと言ったら、なぜ刀を持ってるんだという話になる。

確かこの時代、武士以外の人は帯刀してはいけないはず。

町人が刀を持ってたら怪しいな。

と言うわけで

「……」

詮索されたくなかったので無言を貫き通させていただきました。

「……言いにくいのか?」

「はい」

右差しの男性は「そうか」と言って、それ以上聞いてきませんでした。

少し訝しげな目をしていたのは見なかったことにしよう。

すると右差しの男性の前に蕎麦が置かれ、男性は静かに食べ始める。

しばらく黙っていた私ですが勇気を出して男性に声をかけた。

「あの、お食事中に失礼ですが、お聞きしたいことがあって、少しよろしいでしょうか」

「なんだ」

「このあたりに新選組の屯所はありませんか?」

新選組という単語に右差しの男性は微かに眉を動かした。何か話すかと思ったら、それ以降なにも話さず蕎麦を完食した。

そして静かに箸を置きました。

「新選組に何のようだ」

やっぱりこの人新選組を知っているみたいだ。なぜ蕎麦を完食してから質問に答えたのかは謎だが、気にしないでおこう。

「私、新選組に入隊したいと思ってこの町に来たんです」

「……」

男性が私を探るように見てくる。しばらく私の目を見ていたけど、不意に逸らして言った。

「ついてこい」