「蒼蝶」

「はい?」

「この際いい機会だ。溜まってること全部吐き出せよ」

溜まってることですか?

「別にもうありませんけど」

「本当か?俺にはまだ何かある気がするけど」

何か、ですか。

それは、私が約150年後の未来から来たことだと思います。

私はこの時代に一人だけの未来人だから、常に不安が胸にあります。

何度も未来から来たことを、誰かに打ち明けたいと思った。

でも、そんなこと言えるわけない。

私は未来から来ましたなんて、信じてもらえる筈がありません。

仮に未来から来たと信じてもらっても、どうやって来たかと問われたら、幽霊である師匠の力を使ってきました、と言わなければならない。

未来から来たということだけでも信じがたい話なのに、幽霊まで見えますなんて言ったら、話の信憑性は限りなくゼロです。

まさに夢のまた夢の話。普通の人に信じてもらえる訳がありません。

「龍馬さんの考えすぎです」

「……」

龍馬さんの眉がムッと少し寄せられました。そして、私の目を真っ直ぐ見て言いました。

「嘘つくのはもう止めろ。我慢してもさっきみたいに辛いだけだ」

「そんな、嘘なんて吐いていませんよ」

「そうか、まだ嘘を吐くか。だったらおまえが言うまで、この手は離さねえよ」