私の師匠は沖田総司です【上】

天宮を部屋に運び、後の事は山崎に任せて副長の部屋へと向かった。

「副長」

「斎藤か?入れ」

「失礼します」

部屋の襖を開ける。すると、煙草の独特な臭いが鼻をついた。

「土方さん、また吸っていたんですか?控えないと早死にしますよ」

俺と同じく煙草の臭いに顔を顰(シカ)めていた総司が言う。

副長は「うるせえな」と言い、灰入れに煙管を打ち付けた。

「これでも控えてる方なんだよ」

「嘘ばっかり」

「嘘じゃねえよ」

「とりあえず、窓を開けます」

言い合いを初期段階で終わらせ、部屋の窓を開ける。すると、すぐに冷たさを含んだ夜風が部屋を通り抜けた。

部屋の白さも大分抜けたな。

「それで、二人はどこに行ってたんだ?」

「天宮を探しに行ってました」

「天宮をか?そういえば平助が、天宮がどこにもいないって騒いでやがったな」

「フフッ、平助らしいな」

総司が微かに笑う。俺はその間に懐から文を取り出し、副長の前に置いた。

少し血が付いたそれを見て、副長の目つきが鋭い物へと変わる。

「これは?」

「新選組内部の情報が記された物です」

「どういうことだ。天宮を探しに行って、なぜこれがおまえ達の手元にあるんだ。まさか」

「天宮さんが間者だった……て訳ではありませんから」

総司が副長の言葉を遮ると、副長は安堵した溜息を吐いた。