私の師匠は沖田総司です【上】


しばらくその場に立ち尽くしていたら、遠くから足音が聞こえた。

「天宮さーん!」

「天宮、どこだ!」

ああ、懐かしい声がするな。この声は一君と過去の自分の声だ。

少しだけ待っていると、思っていた通りの二人が現れた。息を切らしているから、ここまで走って来たのかな。

それにしても、過去の自分を見るとか不思議な感じ。

「天宮さん、やっと見つけ……何これ。ここで何があったの?」

さっき僕が斬った人達の骸を見て、思わず足を止める二人。

辺りに血とか飛んでるから驚いて当然だよね。と言うか、驚かない方が変だ。

「全部アンタがやったのか?」

信じられないとばかりの表情をする一君に僕は笑顔で

『そうだよ、一君』

って言った。

「一君……?」

僕の一言に怪訝そうに眉を寄せる一君。

そして、勢いよく抜刀した。

「貴様、何者だ。天宮ではないな」

「えっ、どういうこと?」

過去の僕、鈍(ニブ)過ぎる。昔の自分ってこんなに鈍かったっけ?

もう少し鋭かった様な気がするんだけど。

目の前の自分が情けなさ過ぎて溜息が出る。

「天宮は俺を一君とは呼ばない」

「あ!そういえばそうだ!」

慌てて刀を抜く過去の僕。なんか恥ずかしい。