私の師匠は沖田総司です【上】

面倒な奴に気に入られちゃったな。本当、心の底から二度と会いたくないけど、それも無理そうだ。

会わないようにしていても、あっちの方から会いに来そうだし。軽くストーカーまがいなことしてきそう。

普段蒼蝶の意識の奥底で眠っている僕だけど、ストーカーなんてしやがったら表に出てきて容赦なく斬ろう。

僕はそう心に決めて刀を鞘に収めた。

『それにしても……』

疲れたな。

本格的に体に疲労を感じ始めた。

さっき五人斬った後、高杉と刀を交えたから当然かもね。

人を斬ったか……。

『蒼蝶……』

意識を中に向けてみる。

蒼蝶の意識はまだ暗い闇の中に沈んでいた。周りには悲しみなどの感情が渦巻いていて、蒼蝶の体に纏わりついている。

体を返してもしばらく目を覚ましそうにない。

産まれて初めて人を斬ったんだ。心を閉ざしてもおかしくない。

僕だって初めて人を斬った時は体が震えた。

でも、近藤さんや皆のおかげで僕は再び立ち上がり、刀を手にすることができた。

僕を大切に想ってくれる近藤さんたちを、この手で守りたいと思ったからね。

僕は意識を元に戻し、夜空に浮かぶ月を眺めた。

本当は、僕が蒼蝶の隣で支えてあげたい。

危険とはまるで無縁な時代で暮らしていたこの子を、常に危険と隣り合わせの時代に送り込んだ張本人だから。

あのまま普通に暮らしていけば、蒼蝶は人を殺す感触を知ることはなかった。

……いや。僕にさえ出会わなければ、今頃、普通の女の子として暮らしていたはずなんだ。