「まぁ、ここで暮らしていけば、自ずと自分が必要とする剣が見つかるさ。とりあえず、おまえは明日のことだけを考えろ」

「明日?」

明日って何かありましたっけ?

「忘れたのか?今日でおまえの仮入隊は終わりだ。明日、どこに入隊するか決めるんだろ?」

「あ!」

「なんだ、忘れてたのか」

原田さんが呆れた様に肩を竦めました。

思わずムッと頬を膨らませてしまいます。

しょうがないじゃないですか。この頃、隊務と女中の仕事、自分の稽古に追われていたんですから。

「まっ、いいか。とにかく明日だ。楽しみにしておくよ」

原田さんは私の背中をもう一度叩くと、笑いながら屯所の中に戻ってしまいました。

私はしばらくしてから再び歩きはじめました。

いよいよ明日か……。

もちろん、私は1番隊に入隊したい。でも、組長が許してくれるだろうか。

今のままなら、組長は許してくれると思う。

でも、土方さんが私を渡さないと言ってましたからね。

う゛ーん、どうなるんでしょう。

頭を悩ませながら歩いていると、不意に怪しい人影が見えました。

その人影には見覚えがありました。

確か10番隊の隊士です。その人が今、辺りを見渡しながら屯所の外へ出て行きました。

もうすぐ夕餉の筈なのに、なぜ外に出る必要があるんだろう。

……妙な胸騒ぎがします。ここで行かないと後悔するようなイヤな予感。

私は師匠の刀にそっと触れました。

「行ってみよう」

私はすぐにその隊士の後を追いました。