私の師匠は沖田総司です【上】

「はっ、はい。分かりました」

私が返事をすると稔麿さんはニコッと笑いました。

それにしても吉田稔麿と言う名前。

何だか無性に聞いたことがありますね。

吉田稔麿……。う゛~ん……。

「あっ」

「どうしたの?」

「いえ、何でもないです」

もしかしてこの人は長州藩の攘夷志士、吉田稔麿でしょうか。

だとしたら池田屋事件で師匠と戦った人ですよね。

私は目の前の人をジッと見ます。

一見すると稔麿さんは刀を握らなそうな優しい目をした青年です。

しかし師匠曰く池田屋事件の時、師匠が相手をした浪士の中で稔麿さんが一番手強かったと言っていました。

確かに稔麿さんは萩にある松下村塾の四天王の一人ですからね。

松下村塾の四天王には奇兵隊を作った高杉晋作や久坂玄瑞、入江九一がいたといわれています。

能ある鷹が爪を隠すとはこれのことを言うのでしょうか。本当に人は見た目だけで判断してはいけないんですね。

稔麿さんはしばらく喧嘩する二人を見ていましたが、一つ欠伸をすると声を掛けました。

「ねぇ、ヅラ」

「稔麿まで俺をヅラと呼ぶな!!」

「はいはい。それよりも、僕達はもう一人探さないといけない奴がいるよね。早く行こう」

稔麿さんが言うとヅラさんは坂本さんとの喧嘩をやめました。

「そうだな。おい、龍馬、おまえも来いよ」

「……」

「あからさまにイヤそうな顔をするな。そんな顔をしたって連れて行くぞ」

「じゃあね、蒼蝶。気を付けて帰るんだよ」

「はい、稔麿さんこそお気を付けて」

「うん」

稔麿さんが頭を優しく撫でてくれました。

この時代に来てから頭ナデナデ率が高いですね。