私の師匠は沖田総司です【上】

「土方さん、少し外に出てきます」

風呂敷に包んだ自作のみたらし団子を持って、土方さんの部屋に行きました。

「どこに行くんだ?」

「少し、お世話になった人がいるんです。その人にお礼を言いに行ってきます」

「そうか、分かった。気を付けて行って来い」

「はい」

私はみたらし団子と師匠の刀を持って、屯所を出ました。

胸に抱えたみたらし団子が落ちないように歩きます。

そして、川原へ行くと目的の人物がいました。

「坂本さん」

名前を呼べばその人は私の方を向きました。

最初は警戒した目をしていましたが、私の姿を完全に捕えると、やわらかなものへと変わりました。

「蒼蝶、久しぶり」

「はい、お久しぶりです。お隣、いいですか?」

「ああ、いいよ」

坂本さんの隣に腰を降ろしました。

「どうかしましたか?」

しばらく、私のことをじっと見ていた坂本さん。首を傾げると、フッと笑みを浮かべました。

「いや。島原で会った時よりも、明るい顔をしてるなって思った。何か良いことでもあったか?」

「へ?どうして分かったんですか?」

坂本さんに見抜かれて思わず間抜けな返事をしてしまいます。

それが可笑しかったのか、坂本さんはクスクスと声を押し殺して笑いました。

恥ずかしさのあまり顔が熱を持ちます。

「やっぱり。蒼蝶の顔を見たらすぐに分かったよ」

「そうですか……」

将来偉人となるお方は、素晴らしい観察力を持っているようですね。

でも、坂本龍馬はこの国を変える人なんだ。

日本だけではなく、世界を見ている人。

やはり、誰よりも広い視野を持っているからこそ、観察眼にも優れているのかもしれない。

そう思うと、自然と納得できます。