俺は、気持ち良くて
いつの間にか寝入っていた。



ベンチに横になっているのに、
頭が痛く無かった。



『…あ、起きました?』




俺の耳元で女の人の声がした。



『…え…?』



『ベンチで寝てたら、
頭が痛そうだと思って
私の膝で寝かせてしまったの。
勝手にしてごめんなさい。』




『…あ、…いや、…。』




女の人の膝枕で寝ていたなんて…



『…ごめん…』



『どうして謝るの?
私が勝手にしたことなのに。』




『………。』




彼女は、天使みたいな
笑顔で言った。




『私、花って言うの。貴方は、
霧島雨くんでしょう?』




『なんで俺の名前知ってんの…?』



彼女には一度も
会ったことが無いのに。




『お母さんが言ってたの。前にここに入院しててね、もう死んじゃったんだけど…』



『もしかして、…山下香里奈さんの?』



『正解!』







風が吹き抜ける、10月のあの日。


俺は、天使みたいな彼女に出会った。