「奈緒、好きやで・・・」
何?今日の圭、甘すぎやし!
でもこんな圭も大好き!
「なぁ、奈緒、キスしていい?」
耳元でそんな甘い言葉を言わないでよ。私は、彼の顔を見て「ダメ」と言った。
圭はふて腐れた顔をした。
「ぷっ」
圭の顔に思わず笑ってしまった。
「笑うなよ〜」
「だって〜はははっ」
私はお腹が痛くなるくらい笑った。
圭、かわいすぎるよ!
「もういいよ!」
次は圭が私に背を向けた。
「圭、こっち向いてよ〜。ねぇ」
圭は少しだけ振り返ってくれたけど、私が笑ってるのを見てまた背を向けた。
「ねぇ、笑ってごめんね。許して〜」
「嫌やね」
「どうやったら許してくれる?」
「・・・・・・・」
しばらくの沈黙の後、ニヤニヤしながら「キスしてくれたら許してあげる」と言った。
えっ、私からキス・・・?
ムリムリ!
私が動揺していると・・・。
「やっぱり俺からする・・・」
そう言うと真剣な顔をして、片手をベンチについて、私に近づいて来た。
えっ、ほんまに・・・するの?
整った圭の顔が近づくいて来たので、反射的に目を閉じた。
あれ・・・?
何も起きない・・・。
私が恐る恐る目を開けると、満足そうにクッキーを食べている圭がいた。
「ごめん・・・甘いものの誘惑に負けた」
えっ?
『甘いもの>私』ですか?
「・・・・・・」
私はあからさまに嫌な顔をしていたに違いない。
でもさ、甘いものに負けるってどうよ!
ひどくない?
そんな不機嫌な私の顔を見て圭は笑っていた。
「そんなにキスしたかった?」
「はぁ?」
圭ってこんな軽い奴だった?
私の中の圭が音を立てて崩れていきそうだった。
「俺は・・・したかった。でも・・・奈緒のことは大切にしたいから・・・今さっき付き合ったばっかりやし・・・今日は我慢する・・・」
「圭・・・」
ありがとう。
嬉しいよ。
私の目からは涙が零れていた。
「えっ・・・奈緒?どうしたん?」
「・・・わ、私、う、嬉しくて・・・」
圭は、泣きながら話す私をそっと抱き寄せてくれた。
「そんなかわいいこと言わんといて・・・」
私が圭の顔を覗き込むと、圭の顔は真っ赤だった。
「圭・・・」
「やっぱり、前言撤回しようかな・・・」
「ふふふ・・・」
「笑うなよ・・・」
二人の笑い声は、春の空に消えて行った。これからも、他の誰も見れないいろんな一面を見せてね。
End