「奈緒、この前はごめん」
奈緒の表情は暗くなる。
「俺、自信がなかった。中学の時に付き合った子に言われたことが今でも頭に残ってて・・・」
「今でもその子が好きなの?」
奈緒は今にも泣きそうな顔で、必死に声を絞り出していた。
違うよ・・・好きなんかじゃない。
「ごめん。こと・・・」
「もういいよ!」
俺は再び言おうとしていた言葉を遮られ、奈緒は俺の方に走って来たかと思うと、通り過ぎた。
俺は上を向き、目を閉じて大きなため息をついた。
なにやってるんや・・・俺は。
そして再び走った。
これでも走るのには自信があるから、奈緒を捕らえるのは容易だった。

