【完結】無口な王子様


「梶原くん?」


その目は驚き以外にはなかった。


しかし、俺が目を合わせると、表情が一変し、厳しいものになった。


「奈緒がこの1ヶ月、どれだけ辛い想いしたと思ってるんよ!」


「・・・・・・」


「まぁ、わざわざ来てるってことは、いい答えやんね?」


「あぁ」


俺が頷くと、隆が好きな子は笑顔になった。


「よかった。でも、今度泣かしたら承知しないからね!」


俺の目を見ながら、真剣な顔をして言った。


「わかってる」


俺だってわかってる。


彼女がどんな想いであのケーキを作ってくれたか・・・。


どんな想いで告白してくれたか・・・。


そして、どんなに辛い1ヶ月を過ごしたのか・・・。


俺にはわかる。


1ヶ月も経って、都合が良すぎると言われてもいい。


何を言われてもいい。


君に想いを伝えたいんや。


それにしても、君はとてもいい友達を持っているんやな。


そして、隆もいい子に惚れたんやな。


帰る生徒たちの姿がまばらになった頃、ようやく奈緒の姿が見えた。


あれ?ちょと、痩せたんじゃないかな・・・。


痩せたというより、やつれてると言った方が正しいかもしれない。


奈緒は、俺の姿を見つけると、立ち止まった。