それからしばらくして圭は、また別の女の子に告白されていた。
圭は、以前のことが気になっていたが、その子と付き合った。
実際は、苦い思い出を忘れたかったのかもしれない。
そして圭は、彼女の前でもクールでいた。
正しく言えば、クールを装っていた。
だから、前のように嬉しそうな顔をしていなかった。
俺は圭の姿を見るのが辛かった。
なぜ、そんなに偽らなくてはいけない?
そんなことを思っていたある日。
クールを通り過ぎて、凍り付いた顔をして登校して来た。
近づくなというオーラが出ていて、誰ひとりとして話し掛けることができなかった。
何かがあったことは容易に推測できた。
でも助けてやらないと・・・。
放課後、以前と同じように俺は圭の家を訪ねた。
会ってくれるか心配だったが、
「来ると思ったよ」
と目を見て言ってくれたことに少し安心した。
圭の部屋に入ると
「次は、喋らないから嫌だってさ」
と薄ら笑いを浮かべて言った。
その時の圭の顔を思い浮かべるだけで寒気がする。
まるで魂が抜き取られたかのような表情。
「喋らないから・・・?」
「あぁ、喋らないから・・・俺さ、馴れてない相手とは喋れないんや・・・」
それ以来、圭の無口に拍車がかかってしまった。
実際、俺としか話していないんじゃないかってぐらい、学校では話をしていなかった。
俺も圭の凍った表情を溶かそうと努力した、そして高校に入ってからは少しましになっていた。
それは、木下のおかげかもしれない。
あいつが時間をかけて、圭を元の圭に戻してくれていた。
そして、橋本さんに出会って、急激に圭は変わった。