「粉類ふるいにかける」
あれなんか周りに飛んで粉だらけになってるし。
「オーブンを温めておいてね」
これくらいならできる!
「チョコとバターを湯煎にかけて溶かし、生クリームと卵黄を加えて混ぜる」
ゆっくりと溶けていくチョコとバターを見つめた。
チョコとバターのマーブル模様がやけにきれいに思えた。
ぼーっと考えていたら、手を滑らしそうになってるし!
「奈緒!よそ見しない!」
「は、はい」
性格変わってきてるし・・・・。
「卵白に砂糖を加え、ハンドミキサーでつのが立つまで泡立てる」
つの?
私は全く想像が出来なかったが、ミキサーで混ぜるうちに、真っ白いフワフワした物質になった。
「これくらい?」
「う〜ん。もうちょっとかな?」
こんな感じでケーキ作りは進み、後は焼くだけ。
焼けるまでの間、私たちは片付けをし、休憩することになった。
「奈緒、がんばったね!」
沙知が優しい笑顔で優しい言葉を掛けてくれた。理香のトリュフも知らないうちに出来上がっていた。
「私はね、毎年沙知に手伝ってもらって作ってたんやけど、やっと一人で作れるようになったんよ」
理香も嬉しそうに話す。
理香と木下くんは中学の時から付き合ってるから、もう3年近くなるみたい。
今でもラブラブな二人が羨ましい。
ケーキが焼ける甘い匂いと共に、理香の甘い話を聞いた。
ケーキが焼き終わり、恐る恐るオーブンを開けて、みんなで中を覗く。
「うまく出来てるみたいやね」
沙知が嬉しそうに言ってくれた。
「よかった〜」
私の不安が喜びに変わった。
「奈緒、どれくらい渡すの?」
沙知が聞いてきた言葉が理解できなかった。
「どれくらいって?」
「あんた、このまま渡す気?」
理香が、眉をひそめて聞いてきた。
「うん」
「はぁ?これをそのまま渡したら、嫌がらせやで」
沙知たちがそう言うのもそのはず、私が作ったのは、直径15cmのケーキ。
普通なら一人で食べるのはきつい量。
沙知たちは、圭が甘いものが好きなこと知らない。
「嫌がらせ・・・」
甘いものが好きってことを何度言おうか迷ったけど、あれは私の中だけの圭にしたかったから、黙っていた。
「・・・・まあ、量は奈緒が決めたらいいよ」
「うん」
私は静かに頷く。
私の気持ちは決まっていた。
圭にいっぱい私が作ったケーキを味わって欲しい。
ケーキと共に膨らんだ私の気持ちも受け取って欲しい。

