「いらっしゃいませ!」

忘れようとすればするほど思い出してしまう。

由利の彼氏だったということより見たこともないあの人の笑顔が悔しかった。

プルプルプル

「もしもし?」

「あ、亜紀?あのさ、聞いて。由利の彼氏、連絡もとれなくなってどこ行ったか分かんないらしいよ。まじウケる!」

「えっ…」

カチャ

「え?ちょっと、亜紀ちゃん?」

私の身体は自然にあの人へと向かっていた。

カンカンカンカン

「ちょっと待って!」

「君は…」

自分が何をしているのかすら分からなかった。

ただ私は彼の手をつかんでいた。

「どこ行くの?」

「………」

「由利は?由利とはどうなったの?」

「………」

「どうして黙ってるの?」

「俺…俺は…」