「翔吾、お前、彼女と別れたんだって?」


大学に着くとすぐに小上皓一(オガミ コウイチ)が興味津々といった顔で聞いてきた。


「あぁ」


俺は、表情も変えずに短く答えた。


「なんで?喧嘩でもしたのか?」


特に心配はしていなさそうに、理由を聞いてくる皓一にあっさりと返事をする。


「彼女、28歳だろ?そろそろ本気で結婚する相手を見つけたいんだと」


そう、つい数日前まで付き合っていた彼女と俺の年齢差は8歳。

俺は、まだ大学生で結婚の「け」の字も考えていないが、彼女はそうではなかったのだ。



そんなことは、俺だってわかっていたから、のめり込むこともなく、フラレて数日しか経っていないのにケロッとしている。


「なるほどね。翔吾も同世代の子と付き合えばいいのに。瞳の友達とか紹介してもらえよ」


瞳というのは皓一の彼女で、同じ大学の一つ年下である。


「いや、いいよ」


「やっぱり年上がいいのか?」


「あぁ。それより、この前の課題やったのか?」



俺は、少し返答を曖昧にして、この話を終わらせようとした。


「やべっ、忘れてた!」



皓一は、俺に絡むのをやめ、課題に取り掛かっていた。