恐る恐る後ろを振り返る。

「何泣いてんだよ、紗姫?」

菜月くんは、今までと変わらない笑顔で私を出迎えてくれた。

「菜月くん…。」
「だから言ったろ? 怒ってないって。」
「ううっ…。」

私は菜月くんに抱きついた。今までにないくらい、強く、優しく。

「おいおい、痛いって。一応怪我してるんだからな?」
「ゴメン…。でも、もうちょっとこのままでいさせて…。」
「全く、甘えん坊だな。」

菜月くんの腕が、私の背中にまわされる。

この瞬間、私達は初めて、本当の夫婦になったのかもしれない。

ささいなことでケンカをして、それが結構長引いて、他の周りの人に相談して、でも結局離れたままでなんていられなくて、こうして仲直りする。

こんな簡単なことを、私は気づかずにいた。

お義父さんには、感謝しないと。

「何かテレビでも見るか?」
「うん。」

菜月くんから離れると、菜月くんがテレビをつける。平日の昼間だから、ワイドショーくらいしかやってないよね…。

「…え…?」
「…マジかよ…。」

でも、画面を見た私達の頭からは、そんなのんきな考えは一気に吹っ飛んだ。

その番組の特集は…。

「何故? ㈱恋人屋、突然の倒産宣言」