「さてと…。」

誰にしようか? いずれは誰もが経験することになるのだが、何故か順番を考えてしまう。

「…も~、全然決められない!」

私は目をつぶり、名簿に指を当てた。結局、この方法が一番楽だった。

目を開ける。

「えっと…営業第三課の後藤弥頼(ゴトウ・ミライ)くんね…。」

私は内線で弥頼くんを呼んだ。

ドアが叩かれる。

「どうぞ。」
「失礼します。」

ドアから入って来たのは…美青年の代名詞と言わんばかりの、爽やか好青年だった。

「えっと…営業第三課の後藤弥頼くんだよね?」
「はい。」
「えー、今日は『後続育成の日』だっていうのは知ってる?」
「あ、はい。」
「えっと、今日見ることになったから、よろしくね。」
「え…僕なんですか?」

驚いた表情の弥頼くん。

「うん。…とは言っても、たまたま選ばれただけだしね。どうしても今日は嫌だって言うなら、変えるけど?」
「い、いえ! きょ、今日一日、よろしくお願いします!」
「ふふっ…緊張しすぎ…。」

そんなこと言って、自分もトップアイドルに会った時は緊張していたくせに。

「じゃあ、九時に着替えて、もう一回ここに来てくれる?」
「はい。失礼しました。」