「どこ…?」

とりあえず階段を上がっては見たものの、一体どこで事件が起きているのか皆目見当もつかない。廊下には誰もいない。となると、ここにいる全員がどこかの部屋に監禁されたと考える方が自然だ。だとすれば、どこの部屋だ? 支店長室はここにいる全員が入るには狭すぎるし、隠し扉や地下室なんかもここには存在しない。そうなると…。

「どこよ…。」

焦りと緊張で、うまく考えがまとまらない。

「どこの部屋よ…。」

ここにいる全員が入れるほどの広さの部屋。それは分かっている。しかし、それがどこなのかが一向に出てこない…。

「…会議室…!」

私の頭に、一筋の稲光が走った。

会議室なら、ここにいる全員を監禁することなど容易だ。身動きを取れないようにすれば、むしろスペースが有り余るほどだ。

会議室へは、ここから走って一分もかからない。

「急げ…!」

ビルの廊下を、これまでにないほど全力で駆け抜ける。息が切れ始める。

「うっ…。」

突然の激しい吐き気に、足を止める。

「こんな時に…つわりなんて…。」

ふらふらになりながら、私は一歩ずつ歩みを進める。しかしながら、私の体は相当疲れを貯めこんでいたらしい。意識こそあれど、私はその場に横になってしまった。

「…ゴメン…。」

真っ先に、菜月くんの顔が頭に浮かんだ。その後に続いて、ここにいる皆の顔も。

…守れなくて、ゴメン…。

「紗姫さん!」

階下で、誰かが私の名前を呼んだ。