第五話∑恋人になった日

お互いの家族の
話しをした日から二週間、
一緒に暮らし始めてから
一年と二ヶ月。
季節は夏から秋に
変わろうとしていて
比較的涼しくなって来た
ある夜に突然言われた。

『朱雀』

それまでは何のことない
何時もと変わらない日だった。

『何ですか?』

[声]で話すのは
極力避けている。

一つ目は俺がした
二度の失敗のようなことを
起こさないため、
二つ目は何でも通じてしまう
俺たちが“会話”をして
言葉で話すためだった。

『一年以上一緒に居て
ずっと言えなかったことがある
今更な気もするが、
朱雀愛してる
恋人になってくれないか』

《え……? 本当に?》

[声]が先に出てしまった。

《本当だよ》

何時になく真剣な[声]と
真っ直ぐな目。

『俺でいいんですか?』

『朱雀がいいんだよ』

両思いになった瞬間だった。

嬉し過ぎて
顔が暑くなるのを感じた。

《顔真っ赤だな》

『いきなり告白されたら
吃驚(びっくり)してテレますよ』

恥ずかしくて
ついつい目を逸らしてしまった。

『逸らすな、俺を見てくれ』

《ぅ~、だって~》

俺の頬を両手で挟み
無理矢理こっちを向かせた。

『朱雀、愛してる』

[声]と言葉と両方で
言われ、益々顔がほてり
とうとう俯いてしまった……

『俺も愛してる』

痛いくらいに抱きしめられた。

この能力(ちから)を
理解してくれない誰かよりも
同じこの能力(ちから)を
持ってる白夜さんがいい。

『母さんに報告しなきゃな』

嬉しそうに楽しそうに
発する声と[声]が弾んでいる。

『ああ、母さんは
俺が朱雀を好きなことを
知ってたから
恋人になったって
言ったら大喜びするぞ』

どうやら[声]が
聴こえてたみたいだ。