「 おつかれー 」
「 今日暇? 」
あちこちからそういう声が聞こえてくる。
今日もやっと学校が終わった。
「 私…何か今日疲れた.. 」
そういえば、朝比奈さんにカラオケ誘われてるんだった…
正直、行きたい!という気持ちにはなれなかった。
「 何で断れなかったんだろ 」
「 あっ…そうだ日野に何で断らなかったんだ?って聞かれた。何で断らなかったのか自分でも分かんないな 」
とりあえず行くしかないと思った私は急いで鞄に教科書やらノートやらを詰め込んで。下駄箱へ走った。
「 ~♪~♪ 」
「 あ、ライン 」
廊下を走って階段を降りようとしたとき、私の携帯が鳴った。
朝比奈さんだ。
ひまりちゃん、今どこかな?もし準備できたら連絡してね!
明
わかった! …っと。返事、これでいいかな。
急いで靴に履き替えて急いで自転車置き場へ走った。
あ…
日野「 おう 」
日野…だ
「 あ、うん… 」
日野「 なに急いでんの? 」
少し返答へ困ってた私に、
日野「 あ、もしかしてあいつか行くんだ 」
「 そ、そうだけど…私、急いでるから 」
そう言って日野の傍を通って自分の自転車を見つけた。
ガシッ…
腕…? 掴まれてる…?
いきなり腕を掴まれて私は驚いた。
「 な…に?放して 」
日野「 何でお前そんな冷たいの?」
「 別に…そんなことないってば 」
私、日野に冷たかったかな。
この人、モテるし本当によくわかんないし出来るだけ関わらないようにしようと
思っていたからだったのかもしれない。
日野「 お前、男にはいつもそんな態度? 」
男…? 何で男…?
「 何でよ…? 」
日野「 だってお前、こんな態度取んの、男にだけだろ?女の前では猫かぶって。 」
「 そんなことないから…!! 」
日野の言ってることがよくわからなかった。
私は今のクラスに特別仲良くしている子がいないから、朝比奈さん達にも、
日野にも…結構愛想の無い話し方してるかもしれない…けど、
何か日野…この人だけは何考えてるのかいくら考えても分かんない。
しばらく私は黙った。
日野「 オレのこと覚えてない? 」
この少しの沈黙から発した日野の言葉にまたもや、すぐ理解することが
できなかった。
覚えてない…? って…?
「 何のこと? 」
日野「 そっか、マジか、 」
日野はそういうとすぐ傍の階段に座った。
あ…
この眺め…
まさか …
「 梓? 」
日野「 そう オレ、梓 」
やっと分かった。この人は梓。私が小学1年生の時に事故を起こして、
全治一ヶ月の怪我をしたとき、緑病院に入院したときのこと。
緑病院でその時の私の同じくらいの年の男の子が入院してた。
その男の子は梓って名前で、私が入院する一ヶ月くらい前に入院してた子…
私はその子と仲良くなって看護師さんに内緒で梓を隠れんぼをして遊んでたんだ。
私は自分の病室から5mくらい離れた部屋の横で隠れてた。
そこの部屋の近くには下の階へ続く階段があって、私はすぐ梓に見つけられて、
何でわかったの? 」ってきいた。そしたら梓はその階段に座って、
「 ひまりちゃんだからだよ 」って変なこといわれてた。
あの時はそれがどういう意味かよくわからなかったけど…
「 あず…さ… 」
退院後は全く合わなくなってしばらく寂しくて泣いてたりしてたこともあった。
梓のことを看護師さんや梓のお母さんはあっくんって呼んでたけど、私は梓って
呼んでた。
まさかあの時の梓が今同じ学校で同じクラスで隣の席にいると思わなかった。
考えてみればあんまり日野の下の名前を意識してなかった。
名前は知ってたけど全然分からなかった。
そう…私は1年生だったけど…梓のこと大好きだったんだよね。
日野「 なんだ、忘れられてると思った 」
「 あずさ、ずっと知ってたの? 」
思わず私は梓と呼んでしまった。
日野「 おう、お前が気づくまで言わないでおこーかなーと 」
う嬉しい…嬉しいよ…
何か分からないけどホッとして…
「 っぐ 」
日野「 何だよ、泣いてんの? 」
変な涙がでてきて恥ずかしい。
「 泣いてないから 」
私は涙を必死に拭いてこらえた。
そして顔をあげる。
日野「 そゆすぐ泣くとこ、やっぱひまりちゃんだね 」
梓はそういうとクスクス笑う。
急に恥ずかしくなって
「 だから泣いてないから!それに今頃ひまりちゃんなんてさ… 」
日野「 えなに、照れてんの?(笑) 」
「 もううるさいよ 」
私はそういうと笑った。
梓も笑う。
何か…良かった…
「 あ、 」
用事を思い出した私は、
「 ごめん、急いでるから行くね、また何か話そ 」
梓「 おう 」
そういうと急いで自転車のとこへ走って急いで自転車に乗ると、梓は笑いながら
手を振った。
私は振りかえしてあげた。