顔も知らない貴方へ



少しの沈黙の後、
恵太くんが口を開いた。


「.....よかった」

「え?何が?」

「今日梓ちゃんに会えてよかったなって、今思ってたとこ。....昨日、あんなことしちゃったでしょ?だから、嫌われたかもと思って、怖くてさ。だから今日ちゃんと話しがしたいって思ったんだ。ある人にもさ、大切な人ならちゃんと向き合えって背中押してもらったから。」


恵太くんの話しを聞き、
私もゆっくり話し始めた。


「実は、私も今日ちゃんと恵太くんと
話しをしようと思って来たんだ。
私この間何にも言わずに
帰っちゃったし.....。
だから病室最初行ったんだけど、
恵太くん部屋にいなくて。
.....ずっとあそこで待っててくれたの?」


「いや、最初は梓ちゃんのお母さんのとこに行ったんだ。もしかしたら、お見舞いに来てるかもと思って。....勝手にお母さんのところ行っちゃってごめんね。」


恵太くんの言葉に私は
首を横に振る。


「それで、今日はまだ来てないから、
もしかしたらこれから梓ちゃんが病院に来るかもしれないって教えてくれたから、あそこで待ってたんだ。
.....入れ違いになっちゃってたみたいだけどね!」