顔も知らない貴方へ



「ちょっ!恵太くん!
頭あげてよ、私別に怒ってないから!
とりあえず、場所変えよう?」



私は恵太くんの腕を引いて、
たくさんの視線から逃れるように、
早足で中庭へと移動した。


病院の中庭は、
綺麗に整えられ、幾つかベンチが置いてあり、いつもは患者さんやお見舞い客で
比較的賑わっているのだが、
今日は珍しく誰もいない。



私と恵太くんは、
そんな中庭にあるベンチの一つに
並んで腰掛けた。