私は床に置いてあったバックを掴むと、
急いで立ち上がり、
ドアへと向かう。


病室を出る時、チラっと恵太君の方を
見ると、何か言いたげな表情を
していたが、私は逃げるように病室を後にした。





正直、恵太君のキスは別に
嫌じゃなかった。


だから、申し訳なさそうに「ごめん」
と謝った恵太君に一言声を掛けて
あげた方がよかったのかもしれない。


でも、今の私は動揺しすぎて、
きっと上手く喋ることなんてできない。



「はぁー、どうしてキスなんてしたのかなぁ....」



私は病院を出ると、
自然とあの丘へと向かっていた。

無償にあの景色を見たくなったのだ。


私は複雑な想いを抱えながら、
ゆっくりと坂を登るのだった。