顔も知らない貴方へ




7階に到着すると、
私は702号室まで行き、
ドアの前で立ち止まる。


私は鞄の中から手鏡を出し、
手ぐしでささっと髪型を整える。


それから深呼吸をした後、
トントンとドアをノックすると、
中からどうぞという声がした。


「恵太君、こんにちわー」


「梓ちゃん!」


読書中だったのか、
手に本を持っていたが、
私を見るとパタッと閉じて
テーブルに置いた。


「ごめん。もしかして
お邪魔だったかな?」


「そんなことない!
来てくれて俺嬉しいんだから!
こんなのいつでも読めるしね。」


そう言って、私に優しい笑顔を
向ける。