顔も知らない貴方へ




「お母さんこの間転びそうになったのを助けてくれた男の子のこと、覚えてる?」


お母さんはもちろんっ!
というように手を叩く。


「覚えてるわよ!
あの爽やかイケメン君でしょ?」


私はお母さんの言葉に頷き、
話を続ける。


「その人とね、さっき偶然すれ違って、
お礼を言ったの。そしたら、お友達になってくださいって言われたわけ。
別にお母さんの期待してるようなことは、何もないよ。」


私はそこまで言うと、
手土産として持ってきた林檎を掴むと
皮を剥き始める。