顔も知らない貴方へ



「梓、今日始業式だったよね?
何かいい事でもあったのかなー?」



「別に何もないよ!」

私は勢いよく顔の前で手を振る。


しかし、お母さんはなかなか
諦めない。



「はぁー、梓がお母さんに隠し事
するなんて.....。お母さん寂しくて
涙が....」


そう言って、お母さんは顔を手で
覆った。


嘘泣きだとは直ぐに分かったが、
お母さんの根気強さに負け、
私は口を開いた。