顔も知らない貴方へ



「わー!いいの?
ありがとう!なんだか逆に
得しちゃったな。」


両手で嬉しそうに林檎を受け取る姿は
なんだか子供っぽくて
思わず笑ってしまう。


すると、そんな私をみたその人は、
少し驚いたように目を見開き、
突然顔を背けた。


「どうかしましたか?」

「いや、ちょっと見惚れたというか
.......って、何でもない!
気にしないで!
それよりも、今日はお母さんのお見舞い?」


「はい!なるべく毎日会いにきてるんです。」


「そうなんだ....」


その人が小さく呟いた後、

「あの!」

突然大きな声を出した。

「俺、片山恵太って言います!
今は702号室で入院してます。
あの、もしよかったらお母さんのお見舞いついででいいんで、
これからも一緒に会ったり、
お話とか出来ませんか?」


突然の話に驚いたが、
素直にそう言ってくれたのが、
なんだか嬉しくくすぐったい。


「ぜひ!私も片山君ともっとお話
したい!じゃあ、お見舞い来た時、
病室にお邪魔するね。
私は宮間梓です。
よろしくお願いします!」