少し先に、 以前お母さんを助けてくれた 黒髪の男の人が歩いているのが見えた。 私は考えるよりも先に、 何故か体が動き、 その人を追いかけた。 「あの!」 近くまで行き、 私は思いきって声を掛ける。 するとその人は歩くのをやめ、 ゆっくりとこちらに振り向き、 不思議そうな顔をしている。 「えっと、以前廊下で女の人が転びそうになってたのを助けてくれましたよね? 私あの人の娘なんです。 あの時は本当にありがとうございました。」