顔も知らない貴方へ



「っあ!じゃあ私売店行ってきても
いい?外暑かったから、
アイスかプリン食べたく
なっちゃった!」


由良がお腹をさすりながら言う。
そんな由良を見ていると、
私まで食べたくなってきた.....


「じゃあ、私も行こうかな」


こうして、二人で売店に行くことになり
廊下に出ると、
少し先で女の人が転びそうになったのを
黒髪の男の人が支えていたのが見えた。


「うわー、あの人危なかったね。
でもよかったー、転ばなくてって、
あの女の人、梓のお母さんじゃない?」


由良の言葉によく見ると、
確かにお母さんだった。

「お母さん!」

私と由良は急いで駆け寄る。

「あぁ、二人とも来てくれてたのね。
ありがとう。」

お母さんが私達の顔を見て微笑む。


「じゃあ、俺は失礼しますね。」


お母さんを支えていた男の人は、
そう言って一礼すると歩きだした。

「ありがとうございました!」


お母さんがその後ろ姿に声を掛けた。