「おまえが気にしなくても俺が気にする」
残念ながら私の耳には聞こえなかった。
「なんか言いました?」
「これ3番テーブルに」
「綺麗な色ですね」
スカイブルーのカクテルを御盆に乗せて3番テーブルに運ぶ。
隼斗さんのテーブルで周りにはたくさんのお客様がいた。
「あのカクテルお持ちしました」
「なぁにこの子、地味かわいくなぁい」
クスクス笑う声に私は顔を俯かせた
バシャンと音がして目を開けると涼牙さんが空のグラスを持って立っていた。
「ちょっとなにするのよ
なんとか言いなさいよ」
涼牙さんは何もいわず立ち去ってしまう。
慌てた隼斗さんが涼牙さんの肩を掴んで振り向かせた。
「さっきからなんのつもりだよ?」
「おまえの客が節度がないだけだろ」
「謝れよ、やっていいことと悪いことがあんだろうよ」
確かにカクテルかけちゃうのはよくないよね。
私は急いでタオルを用意して手渡した。
「もう本当に最低」
「ごめんなさい」
「帰るわ」
隼斗さんが慌ててひきとめる
「ドレス買いに行こう?」
「いらないわ二度とこないから」
私は知らなかった
後で美弥さんからきいたのは彼女はお金持ちのお嬢様でここの常連さんだということだ。
「涼牙ちょっといい?」
「あがるから」
店長さんの言い分も聞かずに涼牙さんは二階にあがってしまう。
私も慌てて追いかけて事務所に入った
「ごめんなさい」
「なんでおまえが謝るわけ」
私がいるにもかかわらずにシャツを脱ぎ捨てる。
「だって」
「俺は自分がそう思うからそうしただけ
じゃあお疲れ」
「待って」
涼牙さんは私を壁際に追い詰めた。
「うるさいな俺の何も知らない癖に」
そのままキスされ私はしばらく動けないでいた。
涼牙さんはそのまま事務所を出て行ってしまった。
私どうすればいいんだろ。
しかたなくしばらく事務所にいた。
そんなときだ誰かの携帯のバイブが鳴る。
見れば涼牙さんのシャツの胸ポケットには携帯が入ったままだ。
私は携帯を抜いて事務所を出てプライベートルームのドアをノックした。
「なに?」
顔をだした涼牙さんはすごく不機嫌だ。
「携帯忘れてました」
「んで戻んないの?」
「あんなこと会ったばかりだし戻れませんよ」
仕方ないなと言って涼牙さんは部屋に通してくれた。
中はけっこう広い空間だ。
「あの・・・」
「適当に座ったら?」
私は手近なソファーに腰かけた。
しばらく待っているとカクテルが運ばれてきた。