私は一階に降りて周りを見渡しモップとバケツで床を磨いていく。
床を磨きあげテーブルを拭きだしてやはり思うのは物が邪魔だということだ。
するといつの間にか涼牙さんが横にいて私に言う。
「いつものことだ」
「いつものことって」
涼牙さんは私が掃除をしていたのを見ていたのだろう。
バーカウンターの上に移動してくれた
「邪魔じゃないですか?」
「別に支障ない」
それならいいけど・・・
私は残りのテーブルを拭きあげ終わると美弥さんと隼斗さんが戻ってきた。
「のど乾いた」
「あの・・・ちゃんとしたほうがいいと思います」
「まだつっかかってくるわけ」
私の中で何かがふっきれ隼斗さんに歩み寄った。
「お客様用のテーブルですよね」
「どうせ後で片付けんだからいいだろおばさん」
だんと音がして見れば涼牙さんが拭いたグラスを置いていた。
「謝れ」
「俺が悪いわけじゃないだろ」
「なになに何事?
涼牙どうしたの?
隼斗につっかかるなんてらしくない」
「別に」
「涼牙、言いたいことはいいなよ?」
「なんでもない」
そのまま涼牙さんは外に行ってしまった
「隼斗は?」
「私が悪いんです
トイレ掃除してきます」
私は慌ててトイレに駆け込んだ。
まだドキドキしている。
あんな風に涼牙さんは怒るんだ。
トイレ掃除を終えて戻るともうすでに片づいていた。
「ちょっといい?
隼斗も」
私と隼斗さんはバーカウンターのスツールに座った。
「こいつが悪い」
「あのね小学生の言い訳じゃないんだよ隼斗
涼牙があそこまで怒ったの初めてなんだから
元々、難しい子なんだから」
「ごめんなさい私がでしゃばったから」
「たぶんねそういうことじゃないんだよね涼牙」
バーカウンターの涼牙さんは何も言わない。
「ったく俺が悪いんだろ」
お互いに譲らない険悪なムードのまま私は気まずくなった。
そんな私の肩に腕をまわしたのは美弥さんだ。
「どうしたん?そんな顔して
いつものことやから気にしなや」
「でも・・・」
「ええから、なっ?
店長、店開けるで」
「そうだね、3人とも仲良くね」
重苦しい空気を破ったのは意外にも涼牙さんだった。
「言葉にはきをつけろ」
「言葉?隼斗がなにか言ったの?」
切れ長の目が床をみつめながら呟いた。
「おばさんって」
周りを見渡しても隼斗さんはもういない
お客様のところに行ってしまったようだ。
「あの気にしてませんから」
笑顔で私は言った。