五時の終業のチャイムが鳴り私は伸びをしてオフィスを出た。
真紀からもらった紙切れに書かれていた場所は駅一つ分の場所で細い路地の先にある小さな会員制のBRだった。
外をはいていた店員さんに声をかけてみた。
「あの・・・」
「あん?」
うわっかんじの悪い店員さん・・・って朝の人!?
「朝はどーも」
「どんくさ女か
ったくあんたのせいで肋骨折れたからな」
「私はそんなに重くありません」
するとお店のドアが開いて背の高い店員さんが出てきたがちらりとこちらを見ていたがそのままタバコに火をつけ壁に背を預けて携帯をひろげてしまった。
「涼牙さんおはようございます」
「騒々しい」
涼牙さんは切れ長の目でそう言った。
まだ眠いのかなあまり機嫌よくなさそう。
またドアが開いて今度は愛想の良さそうな店員さんが出てきた。
「なにサボってんねん隼斗」
ごんと音がきこえそうなほど隼斗さんの頭を叩いた。
「こいつがつっかかってくるから」
「なんやお客様やん」
「客?客なわけないだろ美弥」
「私・・・」
「まったく君たちは
隼斗、美弥さっさと掃除。
涼牙、君まで何してるんだい?
もう準備はできてるのかい?
ごめんねぇばかばかっで。
うちは19時からなんだ」
「あっいえ」
「君みない顔だね
初めて?」
「はい」
「涼牙、手あいてそうだね
何か手伝わせてあげて」
その言葉に隼斗さんと美弥さんがクスクス笑っている。
なんで笑ってるんだろう。
「仕方ないなついてこい」
「あの私、バイトできたわけじゃないんです」
「つべこべ言わないの
時間が足りないんだから
真が熱だしちゃったから力貸してよ、ねっ?
お給料は渡すから」
私は渋々頷いてお店の中に入った。
落ちついた店内はあまり明るくなく本来ならお客様用のテーブルには携帯やら鍵やら果ては飲み物やお菓子まで散乱している。
ソファーには誰かの私服だろうかとにかく酷い有り様だ。
あと一時間たらずで片づくのだろうか
涼牙さんは本当に名前のごとく涼しい顔でバーカウンターに入っていく。
私も後に続こうとして先ほどの店長らしき人に止められる。
「待って先に二階に行こう」
二階は個々のプライベートルームと事務所があり事務所に入ると貴重品をロッカーに入れスーツをかけてエプロンをつけた。
「はいこれ」
手渡された名札をつけて完璧だ。
「よろしくお願いします」
「ごめんねぇでも頑張って
あぁ僕は店長でいいから」