犯人は田中殺人事件【短編】

何日も前から今日の天気が大荒れである事はわかっていたが、それほど気にはしていなかった。

しかし集合場所からタクシーに分乗して到着したのが港であり、そこに停泊しているクルーザーで離島を目指すと聞いた時は、荒れる海を見てマジかよと思ったものである。

だが女の子二人がクルーザーに乗れると聞いてはしゃいでいるのを見て、私も華やいだ気分になりまあいいかと思い直した。

私が頭のどこかで(マトモな船長なら出航はトリヤメなんだろうな)思うのとは裏腹に船長は無理やり荒れた海へとクルーザーを出航させ、完全に陸地が見えなくなってしばらくしてから当の島が見えてきた。

とんでもない大荒れの海に長時間もみくちゃにされた我々は全員船酔いにヤられ、半死半生というか半分以上死んでいだが、急いで帰らないといけないという船長に追い立てられ崩れ落ちるように上陸した。

船長は全員が下船した途端に出航し帰って行った。

きっとどうしても観たいテレビ番組があるに違いない。

そしてこの島唯一の波止場まで我々を迎えに来てくれていた山さんと海さんに案内してもらって徒歩で(船酔いが抜けておらず這うように)これまたこの島唯一の館へ向かい、たかだか数百メートルの距離をおよそ十分もかけて歩いた。

集合場所への集合時間は早朝といえる時間だったが、館へ到着したのは昼過ぎになっていた。