今このラウンジにいるのは残り二人。私の他には田中氏だけである。

田中氏は30歳位の女性で、ややポッチャリ体型である。なんだか今は体の具合が悪いのか顔面蒼白で歯の根があわずにガチガチと鳴らしている。その上、手や衣服が何やら赤黒いシミが点々と飛び散ったように汚れている。ナポリタンかカレーうどんでも派手に飛び散らせながら食べたのだろう。行儀のあまり良くない方のようだ。

そしてこの場にはいないがこの館にはあと二人、『山さん』と呼ばれているおじいさんと『海さん』と呼ばれているおばあさんの老夫婦がいる。

この二人が館を管理しており、料理の支度から配膳、館の清掃から保全、果てには島への連絡船の操縦まで何でも二人だけでこなしてしまう。

という訳で現在この館にいる人間は九人で、一人は死んでおりさらに一人は私なので、1ヶ谷氏を殺した犯人の容疑者は七人に絞られる訳である。

たった七人しか容疑者がいないのであれば、探偵役を務めるのは初めてとはいえ頭脳明晰な私にはいささか簡単過ぎる事件になりそうだ。

何しろこの私は有名な探偵マンガは一通り読んでいるのだ。ネットカフェで!