ケータイの着信履歴から、一番上の番号を呼び出す。まもなくさっきの、ぼそぼそしゃべりの男が出た。
「お疲れ様です、サトコですー。今ホテルのあたりです。…はい703号室。じゃ、行ってきまーす」
話してる間に、ホテルの前まで着いた。若いカップルが入ろうかどうしようか迷っているのか、目の前をうろうろしている。
(…すごい、邪魔。入るんだったらさっさと入ればいいのに。あたしみたいにさ)
ずかずかホテルの中に入り、フロントを突っ切ってエレベーターに乗り込む。こうして小娘ひとりで入るのも、もう慣れた。





普段のあたしは大学生。休日と、授業が午前中だけの日だけ、風俗の《お仕事》をしている。風俗っていってもいろんな種類があるけど、あたしが選んだのはイメクラ。なんとなく、あたしと同じ種類の人間(…あたしは、恥ずかしながらオタクである。つっても、全然ヌルいんだけど)が客として来るんだろうな、っていうそれだけで。実際は、いろーんなオキャクサマが来てるんだけど。この《お仕事》は、客に左右されることがほとんどだけどそれなりに楽しい。