だから、私は恋をしない。


「またまた…」

「何回言っても同じだよ、鈴香」

「せめて、同クラの男子にくらい笑ってあげなよー!!」


バシバシと叩く鈴香をなだめ、私は数学準備室に向かった。


笑わない。

笑えないの。

ていうか、親しくもないやつに笑いかける必要なんてないじゃん。


ぶつぶつと独り言を呟きながら、数学準備室の中に入って、次の授業で使うコンパスと、三角定規などを持ち出した。


いつも思うけど…


「…重い」


ヨイショっと、担ぐもののよろけながら教室へ向かう。