「会長…入りますよ?」


控え目に三回ノックし、ドアを開ける。


「いらっしゃい、小田切さん。汚くてごめんね」


…確かに。

そう思ったけど流石に声には出せなかった。

本来5人でやるはずの仕事を1人でやっているんだから、手の回らない部分もあるんだろう。


「この状況見たら多分わかると思うんだけど…僕の手伝いをしてほしいんだ」


そう言っている間も、会長は手を休めずに書類にサインをしている。


「あれ…」


そこであることに気がつく。

朝は無かったはずのものが彼の右手に巻いてあった。